2014年08月22日

カレルヴァンウォルフレン 『いまだ人間を幸福にしない日本というシステム』

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カレルヴァンウォルフレン『人間を幸福にしない日本というシステム』という本を知ったのは90年代の後半のことです。

非常に過激なタイトルであったこともあり、またその内容を読んでみたい衝動にかられて読んでわかったのは、読んだ日本人に切実に迫る内容をこの本はもっている、ということです。ダッシュ(走り出すさま)

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カレルヴァンウォルフレン

ウォルフレン氏が言いたいのは、日本という国のシステムが、国民を幸福にしないシステムになっている、ということです。がく〜(落胆した顔)

それは、日本に政治的な説明責任の中枢が存在していないことで、国民が幸福になれない、ということです。

官僚のすることに、どうしてこれをなすことが正しいのか?
どのような正統性があるのか?


を説明する責任がないために、野放図な行政がなされて、かつそれをチェックし、制御する機能が不存在ということです。


その例として、地方には全然人が通らないところに道路や橋を作り、川や海には不必要な護岸が作られたりしている。


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そのことで、美しい景観が損なわれている、ということです。もうやだ〜(悲しい顔)

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また、同じ物の物価にしても、日本で売られている物は先進国でのそれよりはるかに高い、そのことで国民は高い物価に困窮している。


また、貿易障壁を築くことによって国内産業を保護、そのことで円高の際にも、輸入品が通常は安く享受できるにもかかわらず、その恩恵を国民は享受できなかったのは、私には印象強く残っています。

また、戦後、日本は経済的な発展を達成し、国民はその恩恵を受けることが出来ましたが、その後いち早く官僚がイニシアチブを取って日本の経済システムを戦中経済から戦後経済に移行しなかった、そのことでバブルが80年代におき、そしてそれが弾けてしまった。


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その移行がスムーズにいけばバブルの崩壊はなかったとウォルフレン氏はいいます。

他の学者がみないことを、鋭く分析してそれを読み手に出して、鋭く迫る迫真の文章で非常に興味深く読ませてもらったことを覚えています。

しかし、私がこの本を読んだのは、90年代の後半で、「1億総中流階級」などといわれ、しかも物価が諸外国と比べ高いとはいえ、普通に働いていれば普通にほしいものは買えたので特に不満が生じることはない時代でしたし、官僚が借金を垂れ流す悪癖があるとはいえ、国の借金はまだ200兆円程度でしたから、それほど切迫した危機感はなかったのが正直なところでした。


しかし、それから20年近く経ったいま、その状態は改善されたのでしょうか?

否です。


不必要な公共工事に金がつかわれ、それが大きな原因となって国の借金は今や1000兆円になりました。がく〜(落胆した顔)

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「1億総中流階級」などといわれた日本は今や超格差社会になってしまいました。がく〜(落胆した顔)

当時はインターネットなどというものがなかったために、消費者は店で買うしかなったですが、それがインターネットの登場で、いろんな輸入品をネットショップで安く買うことが出来るようになりましたが、現在のような格差社会では、それほどの恩恵を感得できないのではないでしょうか?

また、規制を大幅に撤廃したことで、大手のスーパーやコンビニが地方を闊歩し、地方の小売店は大打撃を受け、雇用の安定を求めて東京を中心とした首都圏に人口が集中してしまい東京や首都圏がさらに住みにくい都市になってしまったのは間違いないでしょう。


戦中経済から戦後経済への移行をしなかったのみならず、戦中の政治体制から戦後のそれへ移行しなかったことがその原因ともいえるでしょう。もうやだ〜(悲しい顔)

戦中は、統制を取りやすくするために、権力を地方に分散するよりも首都に集中させる方が好ましいことは疑うべきもないですが、それを戦後も継続させているとこのような弊害が出てくるのです。

このような一極集中は先進国でもまれなのです。

たとえば、イギリスは中心都市のロンドンから電車で10分も走れば、羊がねそべっている田園風景が広がるといいます。

日本の官僚は、何か問題点があったら、それをピックアップして、それをよき方向へ向かわせる舵取り能力がないか、そういう権力がないとウォルフレン氏は言います。


そういったことはせずに前例主義でいることが官僚の問題点なのです。

これまでにやった事を踏襲するだけである、それが問題なのだといいます。

それがどのような結果になるか、そのことによって出た結果誰が説明責任を負うのかは一切不問にされる、これは確かに日本だけこういう傾向があるわけではありませんが、特に日本ではそういう傾向があるのは否めないでしょう。

このような惨状になってしまったのは、やはり日本の官僚の欠点について真剣に議論をして、それをよき方向へ導くことをしなかった、怠ったことにあるといえましょう。

その意味で、ウォルフレン氏の94年に出した『人間を幸福にしない日本というシステム』という本は非常に示唆に富むモノであったと思います。揺れるハート

それほど、日本のシステムの欠陥は、傷が浅かったからそれを放置、あるいは不問に付していたことが原因でこうなってしまったのは、実に嘆かわしいことでしょう。

また、日本のシステムで欠陥なのは、何も官僚だけでなく、日本の文化にあるとまでウォルフレン氏は言います。

日本人は非常にウォーカホリックであり、その会社に縛られなくてはいけないような精神的な風土が日本人を不幸にしている、といいます。


会社に勤めている人が、政治活動をするからといって残業をボイコットでもすれば、袋叩きにあってしまう、そんな文化もまた人間を幸福にしないシステムの一環である、といいます。

これは私にとって目からうろこでした。


そもそも言論とは何のためにあるのか?

科学は何のためにあるのか?

それを解明したく思っていたことも、大学に進学したいという理由の1つでありました。

大学に進学して、いろいろ講義を受け、いろんな本を自発的に読んでいくうちに、やはり「社会にある問題点をよき方向へ導くためにあるんだ!」ということがわかりかけていた時に、このウォルフレン氏のこの本のこの文章を読んでやはりそう確信できました。

このように会社に縛られて政治活動もするのにままならない社会であっては良き方向へ社会を導くことは出来ないんだということはやはり明白ですね?

社会をよき方向へ導くためには、政府に任せきりにしないで、国民もそのために行動しなくてはいけない、ということが再確認できました。ハートたち(複数ハート)

会社だけではなく、そういった教育も施されてもいない…まさに「日本には市民が不在である」ウォルフレン氏は言います。

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日本人には非常に頂門の針といっていいのではないでしょうか?

更にウォルフレン氏は、新聞、雑誌、ラジオ、テレビといったメディアは全部が全部ではないが、偽りの真実を載せているとまで言っています。

それは、アメリカ寄りで、官僚の仕事の都合上いいそれは、アメリカ寄りで、官僚の仕事の都合上いいものしか書いていないとすら言います。


それは、当局に都合の悪いものはすべて隠ぺいしてきたのは、数々の例で明らかです。

日本の官僚は前例主義ですから、その舵とりをしていく上で、邪魔になるものは抹殺してきたのです。

検察による有罪率が98%と世界中でもまれで、検察ににらまれたら98%の高確率で有罪にされてしまうのです。
ふらふら

日本のような民主主義国でそんなことが…と思われるようですが、残念ながら事実なのです。

ですから、国のすることは全部無批判でいいなどと思わないことです。

公に出るものに関しては、一度疑い、その内実については、これまで自分が得てきた知識を動員して吟味し、考えて発言し行動していくことが日本国民には必要なことであろうと思います。


これは非常に骨の折れる作業ですが、こういった姿勢を持つことが=市民というものでしょう。

これからの国の行く末を占ううえで、重要なことは、やはり市民として何かできることを実行していくことではないかな?と思いましたわーい(嬉しい顔)

ウォルフレン氏が憂慮していたのは、国による公共工事によって不必要なところに橋や道路を作り、そのことで日本の美しい自然の景観が損なわれているということです。

私としても、そういう状態になることは憂慮します。

しかし、これはなぜこんなことをしなくてはいけないかというと、中央集権体制で東京を中心とした首都圏に人口を取られ、そのために金の使い手、稼ぎ手が少なくなり、そのせいで財源を確保する名目で、不必要な橋や道路を造らなくてはいけないということです。

であるならば、公共事業でない違うことをもってして財源を確保する方法を編み出さなくてはいけないようです。

そのことは、佐伯啓思氏『成長経済の終焉』に詳しいです。

そして、国民が東京を中心とした首都圏に住まなくても地方で生活を満喫できるような社会を創造する、あるいは自由に行き来できるようなライフスタイルを確立するということが望ましいのではないかと思います。


ネットで生活できるようになって、東京と地方を自由に行き来できるようなライフスタイルが出来たらいいなと本気で考えています。

私の将来的な夢は地方で転住することですね。

日本にある問題点を把握して、日本国民が市民としてそれをよき方向へ導くために行動していく、その大切さをこのウォルフレン氏『いまだ人間を幸福にしない日本というシステム』を読んで、しみじみと感じました。

このようなことを書いたところで、また行動したところで微々たるものでしょう。

しかし、それであきらめてしまっては単なる敗北主義にしかなりません。

カレルヴァンウォルフレン氏の本はいつも読み手に問題を切迫して迫るので、いつもついつい読み進めてしまいます。わーい(嬉しい顔)

しかも何回も。

新刊書の告知が出たら、すぐに予約してしまいます。

こういう衝動にかられる著作家は私にとって非常にまれです。

●あなたにも、このウォルフレン氏の本はおススメです!
  ↓



いまだ人間を幸福にしない日本というシステム (角川ソフィア文庫)

★その他、この分野について理解するのにおススメの本は以下!
  ↓

人間を幸福にしない日本というシステム
緊急版 年収120万円時代-生き抜くための知恵と工夫-
現代を見る歴史
成長経済の終焉―資本主義の限界と「豊かさ」の再定義 (Kei books)






posted by ロックさん at 13:46| Comment(0) | 現代社会論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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